リハビリホーム一歩

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ホーム長コラム

介護への思い、日々の雑感を綴っていきます

復活!

パーキンソン病という身体を思うように動かせなくなる病で苦しんでいる金谷さんという方がリハビリホーム一歩に通っています。当施設では、高齢になっても、身体が不自由になっても、1人1人が自分らしく、生涯現役を目指すことを理念にしています。その理念を実践してくれるように、金谷さんはバンドの一員として、多くの人の前で学生時代に打ち込んでいたサックスの演奏を成し遂げたのでした。

 

金谷さんが、この病になったのは、平成5年で今から約26年前、40歳の時でした。その頃、金谷さんは若くして靴の販売会社の役員をされていて、仕事人間だったと聞いています。そんな仕事人間だった金谷さんを突然、病が襲いました。その診断を下されたときは本当に衝撃だったし、仕事を辞めることになった時は、本当に悔しかったそうです。

 

金谷さんが、リハビリホーム一歩に通い始めたのは、平成28年4月でした。ただ、私自身が金谷さんに最初に会ったのは、それ以前で、今から10年ほど前の前職の時のデイサービスでお会いしていたのが最初でした。

それが3年前、金谷さんから連絡を頂き、さいたま市から当施設に通ってくれるようになりました。

 

金谷さんは中学生から吹奏楽部に所属し、10年以上に渡ってクラリネットやサックスの演奏に夢中になったそうです。仕事を始めてからは遠ざかっていたそうですが、身体が思うように動かせなくなった今、金谷さんの心に火を付けたのが、脳卒中で片麻痺になりながら、片手でドラムに取り組んでいる鈴木さんの存在でした。(鈴木さんも凄い方なのですが、その紹介はまたの機会に・・・)

その鈴木さんに触発されるように金谷さんも練習を始めたのでした。教えてくれるのは、当施設で定期的に仲間のバンドメンバーを連れてきて演奏を披露してくれているプロベーシストでもあるハピネス徳永さんが引き受けてくれました。

 

これで、問題なく夢の実現に向かっていくものと思いましたが、練習している部屋を覗くと、身体が固まってしまい、練習したくても思うように出来ていない金谷さんの姿をよく目にしました。そんな姿を見ていた私は、できなくてもしょうがない。成功、失敗は二の次で、ただ、挑戦するだけでもよいのではないか、と思うようにもなっていました。

 

そして、それから2、3ヶ月が経ち、徳永さんが、仲間を連れ、演奏する日を迎えました。その日は、そのプロメンバーが10曲程度演奏する中の2曲ではありますが、鈴木さんがドラム、金谷さんがサックスで演奏に参加する日でした。特に金谷さんにとっては、数十年ぶりの人前での演奏でもありました。その日は、挑戦する金谷さんを一目観ようと、奥様やお子さんも駆けつけてくれていました。

 

課題曲は2曲。自らリクエストしたジャズの名曲「Take Five」と、はしだのりひこさんの「花嫁」です。そして、いざ金谷さんの出番が来ました。徳永さんから紹介を受け、歩いてステージ中央へ。顔はこわばり、緊張感が漂う中、立ったままの演奏スタート・・・。
自分も含め、スタッフ、バンドメンバー(特に徳永さん)は、とにかく祈っていたと思います。身体よ、止まるな!と。
いきなりの金谷さんのソロパート・・・。

誰もが固唾を飲んで見守っていると・・・。

 

見事に、そのソロパートをクリアしたのでした!

 

その瞬間に、バンドメンバー、スタッフ、観客みんなが1つになりました!

もちろん、最後までしっかりと演奏しきったのです。

演奏を終えた後の充実感に満ちた金谷さん。普段なら薬を飲んでも身体が固まってしまうのに、そのライブのすべてが終了しても身体は固まることはなく、笑顔と達成感に満ち足りたとてもかっこいい表情をされていたのでした。

 

その姿は、何かを成し遂げようという「心」が、病気に打ち勝って、身体を動かしているような気がしました。

 

すっかり自信のついた金谷さん。その後も、演奏を披露する場を作り、今も継続しています。今では、すっかり私がお尻を叩かれながら、ギターに取り組み始めました。左からサックス:西村貴行、ベース:ハピネス徳永、ギター:外園一馬、サックス:金谷行雄、ドラム:鈴木茂、ギター:芳賀義彦、ドラム:阿部薫

 

ソロパートを演奏する金谷さん

片手でドラムを見事に叩く鈴木さん

素晴らしい演奏を奏でたバンドメンバー家族も来てくれての記念写真

まだ、鈴木さんのドラムを羨ましそうに見ている頃の金谷さん